高電圧下の実験
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・・・・・ 結論から先に言えば、あまりぱっとしない結果ですが、忘備録的にまとめておくことにします。この類の実験は、いくつか良好な結果が世の中に報告されていますが、いずれもかなり極端な条件で効果が現れるかどうかというレベルのものです。個人の実験室レベルでは、なかなか効果が確認できないと思われます。
1. 核分裂速度の変化を測定する実験:
閃ウラン鉱(U3O8、 238U: α線、β線、(低エネルギーの)γ線 のすべてを放射、238U崩壊が律速段階)を、−約20kVかけた電極版の上に置いて、その放射線量の変化を調べる。 ・・・ 予想では、−電場を与えると、β崩壊の速度が減少する方向
・ 測定器は、USBガイガーカウンター(LND712・α線も通る雲母窓、ストロベリーリナックス)、電源には、イグニッションコイル式5kV電源の出力を
コッククロフト・ウォールトン昇圧整流器で−20kVにしたものを使用。(→ 11.高電圧発生回路(2) )
・ ガイガー管ケースにはアルミ箔を巻いて、高電圧の影響を遮る。α線と低エネルギーのγ線は遮られ、β線だけは通る。
・ 電圧のかけ方は、
@ 間に 3mmtのアクリル板をはさむ
A 10mm角のアクリル棒を挟んで約15mmの極間で浮かせる
の2種類行った。
(結果): B.G.の−20kV、0V、 閃ウラン鉱の −20kV、0V を交互にそれぞれ各1分間5回測定平均
@ 電極間にアクリル板3mm:
平均(cpm) | |||||||
B.G. | 電圧なし | 17 | 29 | 15 | 19 | 15 | 19 |
−20kV | 15 | 17 | 22 | 23 | 19 | 19 | |
閃ウラン鉱 | 電圧なし | 345 | 330 | 345 | 368 | 369 | 347 |
−20kV | 391 | 362 | 367 | 351 | 369 | 368 | |
B.G. | 電圧なし | 20 | 18 | 28 | 15 | 23 | 21 |
−20kV | 22 | 19 | 19 | 17 | 14 | 18 | |
閃ウラン鉱 | 電圧なし | 310 | 346 | 285 | 343 | 283 | 313 |
−20kV | 320 | 340 | 308 | 365 | 320 | 330 | |
B.G. | 電圧なし | 16 | 14 | 20 | 20 | 19 | 18 |
−20kV | 12 | 19 | 20 | 15 | 18 | 17 | |
閃ウラン鉱 | 電圧なし | 355 | 298 | 301 | 320 | 319 | 319 |
−20kV | 301 | 380 | 366 | 355 | 325 | 345 |
∴ (閃ウラン鉱の−20kV)/(閃ウラン鉱の電圧なし) = 1.065、 ・・・ 6.5%(5〜8%)UP
A 電極間15mm:
平均(cpm) | |||||||
閃ウラン鉱 | 電圧なし | 320 | 306 | 303 | 315 | 321 | 313 |
B.G. | 電圧なし | 14 | 23 | 25 | 19 | 25 | 21 |
閃ウラン鉱 | −20kV | 343 | 330 | 340 | 325 | 340 | 336 |
B.G. | −20kV | 12 | 23 | 20 | 20 | 21 | 19 |
∴ (閃ウラン鉱の−20kV)/(閃ウラン鉱の電圧なし) = 1.073、 ・・・ 7.3%UP
したがって、β線の”観測量”は、−電圧をかけたときのほうが増える。(B.G.は特に異常は無い) ただし、ガイガー管は保護のため、ケースごとアルミ箔で覆っているので
+側(アース)に帯電しやすく、電気力線に沿って−電荷を持つベータ線が若干集まったとも考えられる。
そのため、この実験結果では、ベータ崩壊速度そのものが変化したとは言えない。
2. ビーフェルド・ブラウン効果(イオンクラフト)の実験:
イオンクラフトは、上に−電極、下に+電極を非対称に置き、空気の電離によるイオン風を起こさせて、その反動によって浮力を得る装置で、世界中で頻繁に(おもちゃとして、)実験されている。
しかし、実は、真空中でも重力に反発する力や 平行に働く力が発生し、それが、いわゆる”エーテル”というものと相互作用して、”ステルス”や”UFO”などに代表される未知の物理的な力が発生する原理ではないかと噂されている。実際に、そのように主張する実験結果も、個人等によっていくつか公表されている。
・ 上と同様に、高電圧電源(±20〜30kV、昇圧整流器の方向を変えて ±を反転させる)を用い、電極に + あるいは −
電圧をかけて状態でその重量の変化を測定した。電圧の供給は、上下ともφ0.32mmのポリウレタン線を用いたが、バネ押圧力の影響は多少ある。
電圧の測定は、HV−50(サンワ)の高圧プローブを用いた。(放電によって低めに測定されている)
・ 重量の測定はすべて、電気的な影響を受けないと思われる 理化用の上皿天秤を用いた。(最小感量 0.1g)
・ 実験は、
@ 三角柱型のいわゆる”イオンクラフト”(2.7g、骨組み・杉材、上:φ2mmスズメッキ線・アルミ箔(−)、下:周囲にアルミ箔(+))
A @で、イオン風の影響を避けるために、バルサ材−サランラップのフードで全体を覆う(総重量12.6g)
B アクリル板(3mmt)を挟んだだけの電極(47.5g)
で行った。
(結果):
@ 三角イオンクラフト:
上に加えた電圧 | −16kV | +12kV |
重量変化 | −0.25g | −0.05g |
A フードで覆った三角イオンクラフト:
上に加えた電圧 | −16kV | +12kV |
重量変化 | +0.30g | +0.07g |
B アクリル板電極:
上に加えた電圧 | −16kV | +12kV |
重量変化 | +0.05g | +0.05g |
∴ @は、非対称な構造によるイオン風の影響で、特に −電圧を上にかけたときに浮力が発生している。
Aは、おそらく上部の 配線から放電してイオン風が発生しているため、逆に
下の方へ押し下げている。その程度は −電圧のほうが放電しやすく大きい。
Bは、対称な形なので、イオン風による + と − の差は現れなかった。
したがって、フードでイオンクラフトを覆っても、上部配線から上への放電によるイオン風のため、十分な検証はできなかった。
今後の方針としては、イオン風の影響が出ないように、 剛体棒電極をフードに差し込み、あるいは、真空中で実験を行う方向で進めていきたい。